※この内容は、今から不動産投資にチャレンジしよう!という方向けに書いています。不動産投資は、他の収入とのバランスを調整しつつ、資産形成を図る目的で利用されるなどもあり、一概には言えません。悪しからずご承知おきください※
不動産投資シミュレーションの落とし穴
不動産投資は、大きな利益を得られる可能性を秘めた投資方法として注目されています。しかし、始める前にしっかり準備しておかないと、思わぬ損失を被ってしまう可能性もあります。その準備の一つとして、不動産投資シミュレーションが有効です。
しかし、シミュレーション結果を鵜呑みにするのは危険です。シミュレーションには多くの変数が含まれており、その設定によっては、実際の収益と大きく異なる結果が出てしまう可能性があります。
シミュレーション結果を左右する変数
シミュレーション結果に大きく影響を与える変数は以下の通りです。
- 家賃: 周辺の相場をしっかりと調べ、適切な家賃設定を行うことが重要です。
- 入居率: 家賃設定や設備の充実度などによって大きく左右されます。
- 運営経費: 税、保険、管理料、光熱費、ネット、エレベーター維持、清掃費など、多くの項目があります。
これらの変数を正確に設定することが、シミュレーションの精度を高めるために重要です。シミュレーション作成者の意図によって変数が操作されていないか、データ収集がしっかりと行われているかを確認しましょう。
見落としがちな落とし穴:建物の修繕費用
特に中古物件を購入する場合は、建物の修繕費用を考慮する必要があります。長期投資になる場合、建物は経年劣化によって修繕が必要になります。修繕費用は、数百万円から数千万円に達することもあります。シミュレーションに修繕費用を計上していない場合、実際の収益はシミュレーション結果よりも大幅に低くなる可能性があります。
年間収支がプラスマイナスゼロでも資産になる?
シミュレーション結果で年間収支がプラスマイナスゼロでも、資産になると提案されている場合、注意が必要です。確かに、ローン返済が完了すれば、その後の家賃収入はすべて利益となります。しかし、ローン返済期間中は、毎月の返済額を支払う必要があります。また、上記の様に修繕費用などの支出も発生します。これらの支出を考慮すると、実際に得られる利益は、シミュレーション結果よりも少なくなる可能性があります。それどころか、月々の返済が上回るという事態が数か月続けば、資産の毀損ばかりか生活まで影響が出てきます。(DSCRという指数でチェックします)
不動産投資シミュレーション有意義にするために
不動産投資シミュレーションは、投資判断をするための参考資料の一つです。シミュレーション結果を鵜呑みにすることなく、さまざまな情報を収集し、慎重に判断することが重要です。通常想定と悪い状況の低位想定を作成するなど、根拠ある数値でできたシミュレーションは購入前チェックで活用できます。
不動産投資シミュレーションの注意
- ①シミュレーション作成者の意図によって変数が操作されていないか確認する。
- (1つ1つの入力数字の根拠を確認すると良いと思います)
- ②データ収集がしっかりと行われているか確認する。
- ③中古物件の場合は、修繕費用を必ず考慮する。
- ➃シミュレーションは、通常想定と悪い状況の低位想定を作成する
- ⑤シミュレーション結果はあくまでも参考であり、他の情報も参考に判断する。
これらの注意点を守り、不動産投資シミュレーションを有効活用することで、リスクを抑え、成功の可能性を高めることができます。
筆者:資産管理課長 西 真一
保有資格:宅建士、2級建築士、不動産コンサルティングマスター、2級FP技能士 他
巨大なRC建造物修繕工事やエレベーター修繕、機械補修計画など「保全のプロ」として前職はエンジニア。現在は、不動産管理会社での経験を活かし、オーナーの収支改善、相続対策の適正化など数字の面から支援するコンサルです。実務の補修提案にもエンジニアの立場で質疑し、オーナーの資産を守ります。